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一の場所から あらたしコトバ

 一昨日、電車を降りたら 突然の大降りのにわか雨。雨雲のまだら模様の隙間に 青空が顔を覗かせていたので、しばらくホームのベンチで雨が止むのを待つことにしました。夏の無防備な素肌に 地上を激しく叩く雨の音が響きます。充満する雨の音と匂いに包まれて、天から注がれる水の流れを眺めるーーー。こんなふうに 雨が止むのを待つのは、随分と久しぶりのことです。
 ただただ雨の世界に身を浸していると、ふと、雨音のすきま に入り込んでいくような感覚になりました。それは、ピーカンに晴れた真夏の午後 濃い陰影のすきまに滑り込み 時空が止まる、その感じととても似ています。そんなことを思っていたら、雨音やいま自分が出逢っている景色…つまりはこの世の現象…が ザルの網目のようなものに姿を変え、私が その隙間から網目をくぐり抜けていくイメージが浮かんできました。

 そのザルは 仏教でいう縁起の編み目の世界のようでもあり…

 ふと、15年以上前に読んだ、「呼吸のすきまを見る」という あるグルの言葉を思い出しました。あぁ、彼が言っていたのは このことなのかな。でも、一昨日の私は、「すきまを見」ていたのではなく、「すきまに居」たのでした。

 そして昨日、前日の出来事を思い返していたら、やはり15年ほど前の体験が ありありと蘇ってきました。それは何かのワークショップでのこと。自分の内側に深く入って その深いところから出てきた疑問を(次のワークショップの時に)持ってきてください、という課題が与えられました。その晩、私は、自分の内側に意識を向けて どんどん深く 深く、より奥へ 奥へ、意識を向けて行き、これがいまの自分が行ける最も深いところだと思える状態で そこから湧いてくる疑問を探そうとしました。ところが、そこには なんの疑問もなかったのです。疑問も不安もなく ただ安らぎだけがあったのです。次のワークショップの時にそのことを告げると、指南役の女性からは「深いところに行くと疑問がなくなります。その手前で留めておいてください」との返答がありました。
 あのときの“疑問も不安もなく ただ安らぎだけがあった”状態は、一昨日の“すきまに居た”状態と とてもよく似ています。

 現象と現象のあわいに身を置き
 その場所から世界を観て 世界にかかわっていく

 そこからは…
 ここからは、いったいどんなふうに世界が観えるのだろう。
 どんなふうに 私は、世界は、動いていくのだろう。



by himekoto | 2020-09-08 11:52